口腔周囲の外傷
転倒等で口の周囲をぶつけてしまい、来院される方が時々います。口腔周囲の外傷についてです。
1、口唇(顔面)裂傷
顎や顔面をぶつけた結果、ぶつけた部分の皮膚が切れてしまったり、歯で唇の内側の粘膜を切ってしまったり・・・。深さや長さ、出血など程度により縫ったりすることがあります。
口唇裂傷ではないのですが乳幼児に多いのが上唇小帯の損傷。上唇を持ち上げると唇と歯茎をつないでいるすじ(上唇小帯)があるのがわかります。上の前歯が、特に永久歯が生えてくるとこのすじが伸びてくるのですが、乳幼児はまだ張っているので唇に力がかかると切れてしまうのです。切れてしまっても少し伸びるのが早まっただけなので問題ありません。特に処置はしません。
2、歯の完全脱臼・亜脱臼
上の前歯に多く、歯が抜けてしまったり(完全脱臼)、グラグラになってしまったり(亜脱臼)・・・。幼児や小学校低学年の子供に多いです。それは顎の骨や歯根膜と呼ばれる歯と骨をつないでいるコラーゲンの線維がやわらかいので歯をぶつけたときの力が、歯に集中しにくいからです。
①抜けてしまった場合・・・歯根膜線維がすべて切れてしまった
なるべく早く元の位置に戻し、周囲の歯とボンドで固定します。元に戻すまでの時間が経てば経つほど生着しにくくなります。歯根部分表面の乾燥を防ぐ意味で牛乳につけて歯科医院に持って来てください。ほとんどの場合、歯の神経が死んでしまいますので、神経をとる処置もします。
②グラグラになってしまった場合・・・歯根膜線維が半分くらい切れてしまった
周囲の歯とボンドで固定します。歯茎に歯がめり込んでしまっている場合は引っ張りあげて固定します。ただし永久歯と交換が間近な乳歯はそのままにして固定はしません。交換の妨げになるからです。
③グラグラはしていないが周りの歯茎から血が出ている場合・・・一部の歯根膜線維が切れてしまった
特に何も処置しません。ただし歯根膜線維は損傷を受けてますので2週間ほど硬いものを噛まないようにして歯に安静を与えることが必要です。
②と③の場合、まれに歯の神経が死んでしまうことがあります。歯の神経が死んでしまう時期は受傷直後~2年後くらいと幅が広いので受傷から時期が経過していても突然痛くなったり、歯茎が腫れてきたり、歯が変色してしたら要注意です。
3、歯の破折
上の前歯、脱臼とは逆に小学校高学年以上の永久歯に多いです。それは歯の周りの顎の骨などが硬くなってくるので歯をぶつけたときの力が、歯に集中しやすくなるためです。折れた位置で処置が異なります。すでに神経をとっている歯の方が歯根が折れやすいです。
①歯の神経が露出していない場合
欠けた部分を白い材料で埋めたり、欠けた部分が少なければ鋭利な部分を研磨して形態修正のみ行なう場合もあります。
②歯の神経が露出している場合
神経をとる処置を行なったあと、欠けた部分を白い材料で埋めたり、冠をかぶせたりします。
③歯根が折れてしまった場合
歯茎のライン付近で折れている場合は差し歯を作ります。歯根の先の方で折れている場合は残念ながら歯を残すことが出来ないので抜歯になります。
4、骨折
転倒の場合は下あごの骨、喧嘩等の場合は頬や目の周囲の骨折が多いです。下あごの骨折はぶつけた部分の骨が折れるケースとぶつけた部分から離れた顎関節付近の骨が折れるケースがあります。
口の開閉が困難になったり、あごがずれるようなら骨折が疑われます。あごのずれ方で大体の骨折部を予測できますが、入院設備のある口腔外科で治療を受ける必要があります。手や足と違い、長期間動かさないように出来る部分ではないので、手術をしてチタンプレートで固定することも多いです。
5、乳歯の外傷が永久歯に与える影響について
外傷そのものが骨の中に埋まっている永久歯に影響を与えることはほぼありません。永久歯が形成不全を起こすのは次のような場合です。
①テトラサイクリン系抗生剤を歯が形成される時期に服用した場合
②歯の頭(歯冠)が形成される時期に外傷だけでなく虫歯などで歯の神経が死んでしまったのにそのまま放置され、歯根周囲に膿が溜まった状態が長く続いた場合



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