嚥下障害とは?

一昨日の土曜日、大学同窓会の支部新年会と講演会があり、出席してきました。その講演会のテーマが「嚥下障害」。私たちの住む日本は今、高齢化社会に突入し、高齢者の嚥下障害が非常にクローズアップされてきています。しかし、まだまだ研究機関の数、治療施設の数、専門医の数が足りていないのが現状のようです。ここで少し紹介します。
嚥下とは食べたものを飲み込んで胃へ送る動作のこと。この毎日当たり前のように行なっている動作がうまく出来なくなってしまうのが嚥下障害です。しかも高齢者では、咳反射(むせること)も正常におきないことも多く、食べ物や唾液が胃へとつながる食道へ入らないで、肺へとつながる気管に入ってしまっても気がつかないことがあります。(不顕性誤嚥)これにより肺の中がバイ菌に感染して肺炎になってしまうことがあります。(誤嚥性肺炎)
日本人の死因第一位は癌、第二位は脳梗塞などの脳血管障害、第三位は心筋梗塞などの心疾患ですが、実は肺炎が第四位に入っています。高齢者だけに限ると肺炎がとても多く、近年、誤嚥が原因で起こる肺炎がかなり多いことがわかってきました。
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嚥下するとき、口の中から咽頭(のどちんこの奥から食道と気管の分岐点までの部分)においていろいろなことが行なわれます。まず食べ物をかむことによって砕き、すりつぶしながらと舌の上で唾液を混ぜ合わせて団子状の塊にします。(これを食塊といいます。)次に舌を上あごに押し付けることで舌の上の食塊を咽頭へ送り込みます。この後、咽頭では次のようなことが1秒も経たない短い時間の中で意識することなく(反射で)起こります。
①鼻咽腔閉鎖
鼻腔は奥で咽頭とつながっていますが、食べ物が鼻へ入らない様にその通路をふさぎます。
②舌骨(舌の付け根にある骨)と喉頭(気道の入り口で喉仏・声帯のあるところ)の前上方への挙上
気管に食べ物が入らないように気管の入り口を上に持ち上げます。
③喉頭(気道)の閉鎖
気管に食べ物が入らないように喉頭蓋といわれる蓋で気管の入り口をふさぎます。
④舌根部の後方運動
⑤咽頭側壁と後壁の蠕動様収縮運動
咽頭の壁、舌の根元が波を打つようにウエーブすることで食べ物を奥へ送り込みます。
⑥食道入り口の開大
食道の入り口に輪状咽頭筋(上部食道括約筋)と呼ばれる筋肉があり、必要時のみ筋肉が緩んでシャッターが開くように入り口が開きます。
高齢者の嚥下障害の場合、形態的な異常(例えば癌による食道狭窄)よりも咽頭内の機能不全が多いため、食道にさえうまく食べ物が入れば後はうまく胃へ送られるようです。
高齢になると嚥下機能が落ちてしまう理由は以下のようなものです。
①喉頭の位置が下がる。男性では喉仏の位置が下がっているのがわかります。
②喉頭がうまく上に持ち上がらなくなり、上がっている時間も短くなる。
③食道の入り口が開くタイミングが遅くなり、また開いている時間も短くなる。
④咽頭壁の蠕動様収縮運動が小さくなる。
嚥下障害の診断方法は様々なものが用いられていますが、以下のものがあります。
①頚部聴診・・・喉仏の下辺りに聴診器をあてて、呼吸音や嚥下音を聞く方法。嚥下障害があると下咽頭に唾液等が貯留するため呼吸音がにごります。最も簡単な方法です。
②透視・・・造影剤入りの飲み物を飲み込んで、その様子をX線の動画で撮るものです。飲食物が流れていく様子をはっきり見ることが出来ますが、X線の被爆や検査に手間がかかるのが欠点です。意思の疎通が難しい方には行なうのが困難です。
嚥下障害の改善方法は主に専門医による機能訓練です。最近いろいろな医療施設に嚥下障害を扱うところが増えてきました。私の母校、昭和大学歯科病院にも4年ほど前に口腔リハビリテーション科というのが新設されました。(一昨日の講演会の講師をしてくださった先生がこの科の教授です。)もし嚥下障害でお悩みの方がおられましたら私も窓口になりますので御相談下さい。
私が学生だった頃は嚥下障害、誤嚥性肺炎等、言われ始めたばかりでした。授業等でもほとんど取り上げられていなかった気がします。現在の学生では嚥下障害について、国家試験にも出るほどになったそうです。それだけこの障害が認知されてきたということですね。我々歯科医師も虫歯や歯周病の治療だけでなく、介護士やヘルパー、医師の方たちとともにこのようなことにも参加していかなくてはならないなと考えさせられた1日でした。

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